小田原箱根商工会議所メールマガジンより転載「自然由来の新素材、セルロースナノファイバー」2021年09月04日 17:19

小田原コンサルティンググループの一員として
小田原箱根商工会議所メールマガジンVol.419に寄稿した記事です。

-----------以下、寄稿内容

 このメルマガが発刊される翌日には、パラリンピックが開幕します。パラリンピックでは、義足や車いすなどに炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などの先端的新素材が多く使われています。今回は、炭素繊維に次ぐ新材料として、また脱炭素に向けた新素材として注目されているセルロースナノファイバー(CNF)についてご紹介します。

 CNFは、木材などから化学的や機械的処理により取り出された直径数~数10nmの繊維状物質です。2000年代に活発に研究が行われましたが、近年、脱炭素の流れから注目度が高まってきました。CNFは、植物由来のカーボンニュートラルな素材で、鉄の5倍の強度を持っていながら1/5の軽さしかないという軽量かつ高強度、国内森林資源から調達が可能、そして、類似素材であるCFRPなどと比べて高いリサイクル性を持つ、等々の特徴を持っています1)。

 現在、CNFを使った技術開発は、自動車、家電や住宅建材分野での利用を目指した、大企業を中心とした複合材料の開発が大多数です。しかし、この様な大量生産低価格を目指した開発の対局に、少量生産高価格を目指した開発も有ります。少量ではCO2削減効果は余り望めませんが、SDGsに取り組むブランディング戦略の観点から、地域産業振興の一環として行われています。過去には、CNFの持つ増粘効果を利用したお菓子(どら焼き「田子の月」2))やマウスウオッシュ・化粧品などの開発事例が有りました。

 当管内は、自然が豊かで、伝統的な木工業や紙加工業も残っており、また観光業が重要産業で地域の価値向上が重要。そう考えると、前述のお菓子の例など、CNFは、「豊かな自然×先端材料」という様なブランディング戦略として価値を見出せるのではないか、と思いご紹介致しました。

1) 環境省HP: http://www.env.go.jp/earth/ondanka/cnf.html
2) https://www.nipponpapergroup.com/news/year/2018/news181203004302.html