ホワイトバイオ、バイオものづくりと伝統的な発酵食品産業2024年03月24日 12:39

小田原コンサルティンググループの一員として 小田原箱根商工会議所メールマガジンVol.479に寄稿した記事です。

-----------以下、寄稿内容

成長分野として、DX、GXと並んで、BX(バイオトランスフォーメーション)が取り上げられています。「バイオ」と聞くと医療や健康分野を思い起こすと思いますが、それはレッドバイオと呼ばれる一分野に過ぎず、その裾野は広く5つの分野に分類できるそうです1,2)。

中でも、我々ものづくりに関わる人間にも関連が深い分野が「ホワイトバイオ、バイオものづくり」です。バイオものづくりは、環境負荷が小さく脱炭素にも適う技術です。広義にはバイオが少しでも関わる工業分野全般と捉えられ、生分解性プラスチックなども含まれます。狭義には、微生物によるものづくりに遺伝子技術などの最新技術を掛け合わせ、高度化した技術を指します。「微生物によるものづくり」と言えば、伝統的には、お酒、ミソ・醤油、漬物、塩辛などの、いわゆる発酵食品技術です。これらは、この小田原の地でも、なじみの深いものです。

この分野に対する政府の政策は、良くある研究開発の為の補助金(カネ)だけでなく、研究開発の為の施設の整備(モノ)や人材の教育(ヒト)にも及んでおり、ヒト・モノ・カネ三位一体の支援となっています。例えば、我々の近場では、千葉県茂原市に、2023年6月NEDOにより「バイオファウンドリ研究所」が整備されました3,4)。ここでは、発酵生産プロセスに関する教育講座も計画されています。

「バイオ技術」というとなんだかハードルが高く感じられる方も多いと思いますが、伝統的な発酵技術になじみの有る企業様、また従業員のリスキリングを図りながら新規事業を考えられている企業様には、選択肢の一つとして考えておいても良い分野ではないかと思います。

参考
1) 2023年3月14日、経団連「バイオトランスフォーメーション(BX)戦略」 https://www.keidanren.or.jp/policy/2023/015.html
2) 経済産業省HP https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/bio/Kennkyuukaihatsu/whitebio/whitebio.html
3) https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2306/05/news057.html
4) https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101654.html

大学が地域と一緒になって地域の社会課題解決に挑む「共創の場」2024年03月24日 12:36

小田原コンサルティンググループの一員として 小田原箱根商工会議所メールマガジンVol.473に寄稿した記事です。

-----------以下、寄稿内容

皆様、文科省の事業で「共創の場形成支援プログラム(以下、COI-NEXT)」1)いうのを耳にしたことが有りますでしょうか?社会課題に対し、大学、自治体、企業と一緒になって(いわゆる産学官連携)挑むプログラムです。「社会課題の解決」は必ず「経済の活性化」も目的とされます。我々にも無縁ではないと思います。今回ご紹介しようと思います。

COI-NEXTは、「人が変わる」「大学が変わる」「社会が変わる」をキャッチフレーズに、2020年からスタートした事業です。日本各地で取り組まれており、現在42拠点が採択され活動しています。その中でも、「地域」の社会課題に対峙する「地域競争分野」枠というものが有り、全国で22拠点、神奈川では2拠点が活動しています。鎌倉市と慶應義塾大学が中心となって取り組む「リスペクトでつながる「共生アップサイクル社会」共創拠点」2)(以下、慶應・鎌倉拠点)と、神奈川県と横浜国大が中心となって主に藤沢市を舞台に取り組む「“健歩快働”をまちごと科学するイノベーティブ新湘南共創拠点」3)です。

一足先に活動が進んでいる慶應・鎌倉拠点の取り組みを、少し紹介致します。この拠点では、市内ごみ焼却施設の全停止を控えた鎌倉市の、切実なごみ処理問題に取り組んでいます。いくつも先進的な取り組みを行っていますが、工業的に興味深いのは「アップサイクル」を前面に押し出している点です。回収されたごみ(食品残渣やプラ等)を価値の高いものに再利用して行く、という考え方です。例えば、コーヒーかすやカニの殻などを、セルロースナノファイバーやキチンファイバーなどに転換し、高付加価値化する技術開発に取り組んでいます。これらの技術は、我々小田原市でも即、活かして行けるものと思います。技術開発の進展に要注目です。

COI-NEXTは、今取り組んでいる対象地域の社会課題解決に留まらず、将来的には横展開されます。上記の2つの取組は、20~40万人規模の中核都市を対象としており、我々小田原市にも親和性が高いと思います。皆様の事業に活かして行けるものも有るのではないかと思っています。

参考
(1)https://www.jst.go.jp/pf/platform/index.html
(2)https://coinext.sfc.keio.ac.jp/
(3)https://www.jst.go.jp/pf/platform/file/2023/2023_kyotengaiyou_2303.pdf

AIによる業務の支援~海外との取引で役立つ英文作成支援2024年03月24日 12:30

小田原コンサルティンググループの一員として 小田原箱根商工会議所メールマガジンVol.467に寄稿した記事です。

メルマガが出てから随分時間がたってしまいましたが、まだブログに上げでないコラムを、まとめて上げます。

-----------以下、寄稿内容

ChatGPTなど生成AIをマーケティングなど業務に活用しようという動きが、随分広がってきています。今回は、AIによる業務の支援を取り上げます。新型コロナもひと段落、インバウンドも回復し、今後英語による海外との取引が急増し、英語での電子メール対応、ホームページの英語での充実等々が多くなるのではないかと思います。近年、英文作成支援のAIツールもずいぶん良くなってきましたので、ここで、紹介したいと思います。

まずDeepL翻訳1)。皆様もご存知かと思います。簡単にはGoogle翻訳をまず使う事が多いかと思いますが、ちょっと長めの文章を、より英語らしく翻訳したい場合は、私は、やはりDeepLを使います。技術的な内容であれば、Google翻訳よりもずいぶん英語らしい翻訳が得られる気がしています。無料版では単語数が限定されますが、短いパラグラフ単位に区切って使う事で、殆ど気にならないと思います。

DeepLよりも、もっと自然なネイティブに近い英語にしたい場合、英-英変換ツールQulliBot 2)をお勧めします。日本語から英語への翻訳など異なる言語間での変換ツールはかなり昔から開発されていましたが、英語から英語へという同言語間での変換ツールは、比較的最近に良くなってきた様です。私自身、つい最近に知人から進められて使う様になりました。日本語からまずDeepLで英訳し、更にQulliBotでブラッシュアップする、という使い方をしています。私の様な余り英語に強くないものが見ても、カッコいい英語が出来上がります。

更に面白い事に、翻訳ツールを多用すると、日本語の勉強にもなると感じています。翻訳ツールで翻訳させると、どう見ても意図する文章になっていない事に、けっこう遭遇します。これは、結局、元の日本語があいまいであったりして、良くない文章である事が原因です。翻訳ツールを使う事による、隠れた効能だと感じています。

参考
(1)https://www.deepl.com/ja/translator
(2)https://quillbot.com/

医療機器向けにPEEK材を成形加工する受託事業の確立(経営革新計画事例)2023年05月14日 14:40

小田原コンサルティンググループの一員として 小田原箱根商工会議所メールマガジンVol.460に寄稿した記事です。

ちなみに、今回、引用元の原稿を、今話題のchat-GPTで一旦要約させて、それを元に加筆修正を行い原稿に仕上げる、という事にチャレンジしてみました。
こういう使い方であれば、chat-GPTはとても優秀だな、と思いました。

-----------以下、寄稿内容

 東京都青梅市の池田製作所は、インサート成形を得意とするプラスチック成形メーカーです。化粧品容器や医療機器部品などを製造しており、化粧品容器の受注が消滅したことから、新たな市場ニーズに応えるための事業展開を模索していました。そのひとつのヒントとなったのが、PEEKという高性能プラスチック材料の成形に関する問い合わせが増えていたことでした。この材料は医療分野を含む幅広い分野で利用され、成長が期待されていました。

 同社は、新工場移転・建設を活かして、PEEK材の医療機器向け高精度インサート成形加工受託事業を立ち上げることとし、平成29年1月~令和3年12月で経営革新計画に取り組みました。ここでは、顧客に対して以下の3つの付加価値を提供することを目標に取り組みました。?コンタミレス製品の提供 ?PEEK材高精度インサート成形製品の提供 ?迅速なトレーサビリティ情報提供。同社は、これらを実現するために、生産現場の自動化や品質管理システムの導入などを進め、製品の高品質・高付加価値化を実行しました。

 この計画を実行するには、高精度インサート成形機を使いこなす従業員スキル、工程管理や品質管理体制を強化する事が必要でした。生産体制の強化や従業員のスキルアップ、品質管理体制の改善などの為に、特級射出成形技能士や職業訓練員資格などを持つ新たな人材を採用したり、外部講師を招いて講習を行ったりして、会社全体のレベルアップに取り組みました。

 池田社長は、経営革新計画への取り組みを検討している方々へ次の様なメッセージを贈っています。
「経営革新計画に取り組むことで、ビジョンやミッションが明確になりました。よく規模が小さいから取り組めないと伺いますが、会社の規模は関係ないと思います。やる気があれば取り組むべきだと思います。」

参考
(1) 令和3年度東京都経営革新計画事例集
https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/chushou/shoko/keiei/kakushin/

GX(グリーントランスフォーメーション)と「環境」問題2023年03月25日 17:52

小田原コンサルティンググループの一員として 小田原箱根商工会議所メールマガジンVol.455に寄稿した記事です。

-----------以下、寄稿内容

 GXは、自然「環境」の問題ですが、同時に深刻な事業「環境」の問題となっています。この問題は、産業構造の転換が必至で、行政も政策誘導しています。事業者としては、その動きに敏感にならざるを得ません。今回は、行政系の身近な動きを2つご紹介します。

 まずは一番身近な小田原市の動きです。小田原市は、昨年11月に、東京電力パワーグリッド(株)と共同で、脱炭素先行地域に採択されました1)。横浜市、川崎市に次いで県内三番目の採択で、県内では先進地域となっています。この計画では、太陽光発電の関連の施策と共に、小田原駅東口エリアにEV充電器を設置、EVカーシェアの導入など、「EV宿場町」として新しい観光振興構想が盛り込まれています。この「EV宿場町」構想は要注目です。EVの充電待ち時間の活用は未体験領域で、ここからいかに新たな人流を作り出すか、が大きなビジネスチャンスになると思います。

 次は政府の動向です。昨年12月に、環境省から「GXを支える地域・くらしの脱炭素」という今後10年のビジョンが公表されました2,3)。負担感ばかり感じるGX対応ですが、この中で希望を感じさせるのが、「GXとDXの同時推進」です。GXとDXは、現状把握やそれに基づくアクションなどを行う時の方法論が良く似ています。例えば、ものづくり企業が、生産管理システムを紙とエクセルからDXする際に、同時にCO2排出量の計算(?GXの第一歩)も同時に実装してしまう、という様な先駆的な取組が考えられます。それを発展させて、その取組みノウハウ自体を商材として他企業への移転を新事業とする、なんていう夢が広がります。まさにものづくりからの事業転換です。

 GXの流れは抗いようもありません。事業環境の激変を嘆いていても仕方ありません。変革が必至であれば、先手を打って、自社の事業を変革して行く事が、取るべき道かなと思っています。

参考
1 小田原市HP
https://www.city.odawara.kanagawa.jp/field/envi/zerocarbon/topics/ki-20220418.html
2 環境省「脱炭素ポータル」
https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/
3「GXを支える地域・くらしの脱炭素~今後10年を見据えた取組の方向性について~」
https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/topics/20230209-topic-41.html